やりたいこと
「いくらかかるか分からない」が理由で稟議が止まる。 無料で試せる範囲、上限の掛け方、実際の相場を先に押さえたい。
素朴にやると穴が空く
穴1: 「無料枠」の条件が細かい
Gemini CLI は無料で始められますが、入り口によって上限が 4 倍違います。
| 入り方 | 1 ユーザー 1 日あたり | 条件 |
|---|---|---|
| Google アカウントでログイン(Gemini Code Assist for individuals) | 1,000 リクエスト | Gemini CLI が選ぶモデルファミリー全体 |
| Gemini API キー(未課金) | 250 リクエスト | Flash モデルのみ |
| Vertex AI(Express mode) | 変動 | 課金を有効にするまで 90 日 |
試すだけなら Google アカウントでログインするのが素直です。 API キーを取りに行くと 250 件・Flash 限定になります。
さらにリクエストは 1 ユーザー 1 分あたりでも制限され、高需要時はサービスの可用性に左右されます。 1 日 1,000 件は「1 日で 1,000 件を一気に流せる」という意味ではありません。
穴2: 契約しているプランが対象外のことがある
ここは稟議で必ず引っかかります。サポートされないティアが明記されています。
- 個人: Google AI Plus はサポートされない(Pro と Ultra は対象)
- 組織: Workspace AI Standard / Plus、AI Expanded はサポートされない
- そして決定的な一文——Gemini for Workspace のプランは、現時点では Gemini web アプリや Flow video editor といった web ベースの製品にのみ適用され、Gemini CLI を動かす API 利用には適用されない
「うちは Workspace を契約しているから追加費用なしで使えるはず」は通りません。 組織で使うなら Workspace AI Ultra Access か、Google Cloud 経由の Gemini Code Assist サブスクリプションになります。
穴3: 画面に出る金額は請求額ではない
Claude Code の /usage はドル額を出しますが、トークン数を標準の list rate でローカル計算したものです。
プロモーション価格や契約割引は反映されず、実際の請求と異なりうる
さらに、Claude Max / Pro のサブスクリプションでは使用量が契約に含まれるため、セッションのコスト額は請求上は関係ありません。 サブスク利用者が /usage の $0.55 を見て予算を組むのは意味がありません。正式な請求は Claude Console の Usage ページです。
穴4: 事前に見積もれない
Codex の出典が正面から書いています。
似て見えるタスクでも消費量は異なる。 モデル選択、コンテキスト、reasoning、ツール利用、retrieval、キャッシュがすべて影響するため、プロンプト長だけでは見積もれない
上限の形も注意が要ります。local messages と cloud chats の使用量上限は 5 時間のウィンドウを共有し、加えて週次の上限が適用されることがあります。 「月あたり何件」で考えると当たりません。
穴5: 何もしていなくても減る
アイドル状態でもトークンを使います。 Claude Code の場合、通常は 1 セッションあたり $0.04 未満ですが、経路は複数あります。
- Conversation summarization —
--resumeのために過去の会話を要約するバックグラウンドジョブ - Scheduled tasks — セッションがアイドルでも間隔ごとに発火し、そのたびにコンテキスト全体を送る
- Cross-session messages — 他セッションからのメッセージがアイドル時に新しいターンとして配信され、そのたびにコンテキスト全体を送る
- Agent teammates — アクティブな teammate は終了するかセッションが終わるまで消費し続ける
Agent teams はさらに重く、teammate が plan mode で動く場合、標準セッションのおよそ 7 倍のトークンを使います。既定では無効なので、有効化するときに意識してください。
穴6: 長時間セッションが跳ねる本当の理由
「開きっぱなしにすると高い」の中身はキャッシュです。
cache lifetime を超える中断後の最初のメッセージはキャッシュを外し、コンテキスト全体を再処理します。
| 状況 | lifetime |
|---|---|
| サブスクリプション | 1 時間 |
| usage credit を使い始めた後 | 5 分に下がる |
| API キー・クラウドプロバイダ | 既定 5 分 |
usage credit を使い始めた瞬間に、キャッシュの持ちが 12 分の 1 になります。 昼休みを挟んで戻ってきただけでコンテキスト全体が再処理される、という状態です。ENABLE_PROMPT_CACHING_1H=1 を設定すると usage credit 使用中も 1 時間を保てます。
想定外の高額支出の原因として出典が挙げているのは、長時間クリアしていないセッションと、Opus を既定モデルのままにしていることの 2 つです。
手順
1. まず無料の範囲で当たりをつける
Gemini CLI に Google アカウントでログインして、1 日 1,000 リクエストの枠で実際の業務を流します。ここで「1 日に何回呼ぶ仕事なのか」を実測してから、有料プランを検討します。
見積もれない(穴4)以上、実測が唯一の見積もり方法です。
2. 使用量を見る手段を最初に用意する
| ツール | コマンド | 見えるもの |
|---|---|---|
| Claude Code | /usage | セッションのトークン・推定額。プラン利用者は上限に対する内訳も |
| Codex | /status / /usage | セッション設定とトークン使用量、rate-limit reset |
| Gemini CLI | /stats model | セッションのトークン使用量と、現在のクォータの上限 |
Gemini CLI はセッション終了時にもモデル使用量の要約を表示します。
Claude Code の plan usage breakdown は、直近の使用量を skill / subagent / plugin / 個々の MCP サーバーに帰属させます。d / w キーで直近 24 時間と 7 日を切り替えられます。「何が食っているか」が分かる唯一の画面なので、費用が想定を超えたらまずここを見ます。
ただしこの数値は概算で、このマシンのローカルセッション履歴から計算されます。他デバイスや claude.ai の使用量は含まれません。
3. 消費を減らす
出典が挙げている手のうち、非エンジニアでもすぐ効くものを順に。
- こまめに
/clearする。/clear自体にコストはかからない。無関係な作業に移るときは必ず切る。/renameしてから clear すると後で/resumeで戻れる - 既定モデルを見直す。
/modelで切り替え、/configで既定を設定する。想定外の高額支出の主因のひとつ - CLAUDE.md を短くする。 セッション開始時に毎回コンテキストへ読み込まれる。 200 行未満が目安。長い手順は skill に移すと、呼び出したときにだけ読み込まれる
- 使っていない MCP サーバーを切る。
/contextで消費を確認し、/mcpで無効化する。CLI ツール(gh/awsなど)はツール一覧を追加しないぶんコンテキスト効率が高い - effort を下げる。 thinking トークンは output token として課金され、既定の予算はモデルによっては 1 リクエストあたり数万トークンになりうる。
/effortで下げる
Gemini CLI の pay-as-you-go では指針が違います。呼び出しごとの課金なので、正確なプロンプトで 1 回の呼び出しで済ませること。トークンの少ない小さな呼び出しを多数行う場合は割高になりうると明記されています。
4. 組織として上限を掛ける
| 構成 | 上限の設定先 |
|---|---|
| Claude for Teams / Enterprise | admin settings の spend limits |
| Claude Console (API) | workspace spend limits |
| Amazon Bedrock / Google Cloud / Microsoft Foundry | 各クラウドの予算管理 |
Claude Console で初めて認証すると "Claude Code" という workspace が自動作成されます。この workspace の API キーは作成できず、Claude Code の認証と使用専用です。カスタムレート制限のある組織では、このトラフィックが組織全体の API レート制限に算入されるため、workspace の Limits ページで上限を設定します。
人数あたりの推奨レート制限も出ています(組織単位で適用され、個人単位ではありません)。
| チーム規模 | TPM per user | RPM per user |
|---|---|---|
| 1-5 人 | 200k-300k | 5-7 |
| 5-20 人 | 100k-150k | 2.5-3.5 |
| 20-50 人 | 50k-75k | 1.25-1.75 |
Codex の Business プランは $20 / user / 月(2 ユーザー以上・年払い。月払いは $25 / user / 月) で、既定でビジネスデータを学習に使いません。
5. 上限に達したときの逃げ道を決めておく
- Codex: 進行中のターンの途中で上限に達した場合、fair use の範囲でそのターンの作業は続けられる。 追加クレジットを購入するか、小さいモデルに切り替えて上限を長持ちさせる。すべてのユーザーは API キーで追加のローカルチャットを走らせられる
- Claude Code:
You've hit your session limit/weekly limitは全モデル共通のため/modelで切り替えてもアクセスは戻りません。 ただしモデル固有のYou've hit your Opus limitの後は作業を続けられます。メッセージにリセット時刻が出ます - Gemini CLI: 日次上限に達したら pay-as-you-go に切り替える。クォータ上限でワークフローが中断されないことを保証する唯一の方法と明記されています
確認方法
# 1. 自分のプランが本当に対象か(穴2)Google One のページで個人アカウントかを確認する。Workspace アカウントの場合はその旨が表示される。
# 2. 1 日の実測値1 週間ふつうに使い、Gemini CLI なら /stats model、Claude Code なら /usage の週表示(w キー)を見る。
# 3. 何が食っているかClaude Code の /usage の Attribution を見て、skill / subagent / MCP サーバーの取り分を確認する。相場(ただし開発者の数字)
出典にある実績値です。
- エンタープライズ導入全体の平均: 開発者 1 人あたり アクティブ日で約 $13
- 月あたり $150-250
- ユーザーの 90% はアクティブ日あたり $30 未満
これは開発者の数字です。 書類を読ませて分類する程度の事務用途がこの水準になるとは限りません。稟議にこの数字をそのまま使わないでください。 手順1 の実測に置き換えるべき箇所です。
残る限界
- 事前見積もりの方法が存在しない。 出典自身が「プロンプト長だけでは見積もれない」と書いている。実測しかない
- 画面のドル額は推定値。 請求との突き合わせには使えない
- 事務・非開発用途のコスト実績がどのツールの出典にも無い。この図書館でも埋められていない
- Codex の使用量上限はプランごとに幅で示される(Plus の GPT-5.6 Sol は Local Messages / 5h が 10–100 など)。幅が 10 倍あるので、上限からの逆算も当てにならない
- Gemini for Workspace の CLI 対応は**「将来のサポートは検討中」**の状態。今後変わりうる
根拠
facts/claude-code/costs.md—/usageの性質、plan usage breakdown、組織の spend limits とレート制限推奨値、トークン削減策、cache lifetime、アイドル時消費、相場facts/gemini-cli/quota-and-pricing.md— クォータ一覧、無料枠の 3 経路、サポートされないティア、Workspace プランの非適用、pay-as-you-go の指針、/stats modelfacts/codex/pricing.md— プラン価格、5 時間ウィンドウの共有、見積もり不能の明記、上限到達時の選択肢